労働時間に関する労働基準監督署の指導

【事案の概要】

運送会社Yは近距離での配送を専門としていたが、その業務性から労働時間が長くなりがちであった。ニュースなどで耳にする、長時間労働に起因する労働者の健康障害、そこから生じる労働紛争については、他人ごとではないと常々感じていた。しかし、道路の渋滞、荷受け先で他社トラックが集中する際の荷下ろしの順番待ち等、同じルートで同じ品物を運んでいても、いつも以上に時間がかかったりすることから、労働時間を管理抑制していくことは業務の性質上不可能だと思い、事実上、何らの対策をとらずにいた。但し、賃金に関しては時間分及び必要な割り増し分の支払いは怠ることなく支払っていた。

ある時Yあてに、労働基準監督署より長時間労働抑制のための自主点検表が送付されてきた。Yは賃金の未払いも無いので、特に指摘を受けることも無いだろうと思い、早々に書類を仕上げ返送した。後日、労働基準監督署より監督官が訪れ、先日の点検表に基づいた調査をしたいと告げられた。

労働基準監督官は違反の発見と是正を行う為、事業場に立ち入り帳簿、書類の提出を求め、経営者や従業員に尋問を行う行政上の権限を労働基準法により付与されている。

また、これとは別に違反是正の最終段階として刑事司法手続きの措置をとるべく裁判官の令状のある強制捜査が行われることもある。通常、監督官はまず行政上の立ち入りを行い、そこで発見した違反を是正するように勧告する。そこで、違反が是正されれば終結だが、経営者が是正の意思表示をせず、実際上の行動を起こすことも無く、その対応が悪質と見受けられる場合などは刑事司法手続きとなることもある。ここでのYへの立ち入りは初めの段階となる行政上のもので、違反の発見および是正がその目的となるものであった。

【当事務所の関与】

労働基準監督署への是正報告の提出

【事案の顛末】

Yは楽天的に考えていたが、監督官よりいくつかの是正勧告が行われた。その中で特に問題点と指摘されたのはやはり労働時間についてだった。Yでの労働時間は労働基準監督署へ提出している時間外労働協定の限度時間を超えていた。また、トラック運転手については拘束時間(労働時間+休憩時間)を1ヵ月について原則293時間までとなっているのだが、そこについても超えてしまっていた。

Yは配車の見直し、高速道路の積極的使用を推進し、従業員への時短意識を喚起することで、配送面での実質的な業務効率化と帰社後のだらだら作業の改善を行ったうえで時短を達成し是正報告を作成提出し、無事終結した。

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