労働条件不利益変更(あっせんによる解決)

【事案の概要】

サービス業を営む株式会社Yでは短時間の従業員3人を、シフトでの交代制によって限定的な事務職を担当させていた。そのメンバーの一人であるXは古参の従業員で、もともとはXと従業員Aの2人で仕事を担当していた。ところが、当時、XとAの家庭的な事情がたまたま重なり、一時的に2人が出勤できない時期があったため、従業員Bが臨時要員として雇入れられた。しばらくしてXとAが復帰することになるが、結局Bについても雇用を継続することとなり、そこからシフトによる3人体制となった。このときXはYに対してある一定の時間を明示し、その稼働時間については保障してほしいと申し出た。Yはこの件につき口頭で了承し、当該業務に対して一月に要する時間からXの要望する時間を引いた残りの時間をAとBでシェアするという体制となった。

ところが、この形態をとることにより、一つの問題が生じることとなった、3人が担当する業務は月々でその量が変化することから、常にXの稼働時間を固定化すると他の2人の稼働時間が、業務量に比例し減少することがあった。当初は古参であるXに対して他の2人より異論を唱えることは無かったが、徐々に、2人の作業能力も向上し、Xの作業能力を凌ぐようになってくると、この体制について強く不満を感じるようになった。

ある日、AとBはYに3人の稼働時間を平等にしてほしいと伝える。Yとしては、今やX以上に仕事をこなせるAとBの稼働率を上げたほうが効率的だと考え、且つ一月の業務量を均等化した場合に減少するXの稼働率は18%程度なので、その程度なら問題ないのではないかと考え、その旨をXに伝えた。これに対してXは時間にすると10数時間の減となり、それに伴う賃金の減少は看過しがたいので、時間当たりの賃金をアップすることにより、今までの支払額を保証してほしいと申し出た。Yは能率的に3人の中で一番低いXの賃金を上げることへの抵抗感もあり、また、他の2人の反発も予想されることから、その申出を拒絶した。その後、XとYは何度か話し合いを持ったが、結局、物別れとなり、業を煮やしたXは遂に、労働局のあっせんの場に申し立てを行った。

【当事務所の関与】

あっせんにおける補佐人

【事案の顛末】

XはYによる一方的な労働条件の不利益変更は認められないと主張し、Yは合理的内容の変更であり有効だと主張する。双方の主張は平行線だったが、Xは今後も退職の意思が無く、Yとしても特にそのような働きかけをする意思もなかったので、将来にわたっての円滑な労使関係を考慮し、YがXの主張する時間をある程度認めることとなった。これにより和解が成立し終結となった。

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