従業員の解雇

【事案の概要】

美容師Xは美容室Yで1年ほどの勤務を続けていたが、常々、オーナーY1と労働条件について対立していた。Xは業界での経験が長く、業界での相場等にも詳しかったこともあり、自身の手当についてY1と交渉し改善させるなど、Yにとっては手ごわい従業員という印象だった。当初は労働条件での対立があったXとYだったが、それが改善するとともにXの矛先はYにおける仕事の仕方にシフトしていった。ある時からXはYからの指示にことあるごとに反抗するようになっていった。また、その言葉遣いについても上司に対する最低限のマナーを逸脱したものであるとY1は感じていため、その都度口頭で注意を行ったが、一向に改善されることは無かった。また、他の従業員がXの仕事への姿勢や尊大な態度に対し不満を募らせ、遂には「Xをやめさせて欲しい。Xが辞めないなら自分立ちが退職する」との声が上がってきた。ここに至ってY1は遂にXへの退職勧奨に踏み切る決意をする。何回かの勧奨に対して押し問答にはなったが、退職にあたっての好条件をつけることにより、Xは3ヵ月後を目途に求職活動を始めるとY1に伝えた。その後、3か月経過したが、一向にXより求職の進展や退職の申出の話がこず、不審に思ったY1がXに尋ねたところ「はぁ?、何の話ですか?そんなこと言った覚えありませんけど!」と、驚愕の答えが返ってきた。ここにきてY1はXを解雇するしかないと決意し、その手順について検討するに至った。

【当事務所の関与】

問題解決の話し合いにおける対策の検討、決定等への参与

【事案の顛末】

Y1は一刻も早く、Xと顔をあわせなくてももいい環境になりたいと考え、30日前の予告解雇ではなく、即日解雇をしようと考えた。労働基準法では「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」とある。Y1は解雇予告手当を計算し、現金で用意を済ませ、業務終了後、Xに話があるので残るように告げた。他の従業員が退店したのち、Y1はXにおもむろに切り出した。「Xさんあなたは本日限りで解雇とします。明日からは出勤の必要はありません。解雇予告手当は今ここでお渡ししますのでお受け取りください」いつも饒舌なXだが、さすがに一瞬たじろぎ何秒か沈黙が流れた。しかし、すぐにいつもの口調で「これは不当解雇だ。認められない。私のお客様が明日も来るので私は明日も出勤します」とY1に迫った。Y1は「明日からあなたはここの関係者ではありません。あなたが私のお店に立ち入ることは拒否します。これを無視する場合は警察沙汰になるかもしれませんよ」と返答した。その後、1時間程度押し問答が繰り返されたが、Xは頑なに解雇予告手当は受け取れないと拒んだ。最後にY1が「あなたが受け取らないなら、これは法務局に供託します。これでうちは支払ったことになる。あなたは法務局まで出向いてもらう必要がありますが、いつでも受け取れます」と伝えたところ、Xはなぜかこの場での受け取りに応じることとなり、一応、労働基準法上の解雇の手続きは終結した。

【追記】

大荒れの解雇通告であったうえ、実は時間外労働での未払い等の問題や、不当解雇を主張されそうな案件でもあっため予断を許さないところだった。後日、ほどなく未払い請求がくることとなり、弁護士を通じた示談の結果、多額の支払いが必要となった。一方で不当解雇については結局主張されることはなかった。このようなリスクをはらんだ解雇であることは予測がついていたのだが、それを上回るY1のXに対する嫌悪感がこの結果に突き進んでいってしまった。

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